与えていただいた生命
若杉章子

サン・スルピス大神学院で神学講座を受講した際の講義で「神による創造」をお聴きして、この想いは一層深まりました。
以前、病院で訪問させていただいたある患者さんが「自分がなんでこんなにつらい目に遭うのか、と想ったこともありますが、今は、生命はいただいたものだからしっかり生きてお返ししなければ、と想います。」と語られ、さらに「人生、誰でも身体的・精神的にダメージを受けますが、それは考えさせ、教えてもらうチャンスです。」と明るい表情で語られたことが大変印象深く心の奥に残っています。この方は“感謝を忘れず、日々精一杯生きる”ことの大切さを実感を以って気づき、会得され、語ってくださったのです。私は“いただいた生命の大切さ”を改めて胸に響かせていただき、大きなものをいただきました。スピリチュアルケアとは正に・・双方向に働くもの・・なのですね!
盲目のテノール歌手、新垣勉さんのことも想います。自分を捨てた親を殺そうとまで思った彼が、生命を与えていただいた神に出会い、その愛のすばらしさに気づかされたのです。そして今、いただいた生命を喜び、親に似た美しい声をいただいたことに感謝して、明るく力強く歌っています。歌う技術を超えたスピリチュアルなものに溢れた歌声を日々聴いています。
彼のコンサートを聴きに行きましたが、曲の合間のお話はユーモアに満ち溢れていました。そして、「You are only one on this planet ,not number one!」と強調されました。そのコンサートはチャリティーコンサートでしたが、皆さん喜んで募金箱に群がって寄金をされていました。寄付金は全額ペシャワール会に送られるということでした。 彼は「みなさんの気持ちをはっきりと伝えられるコンサートにしたいので無料のコンサートとし、募金箱に入れてくださったお気持ち、その全部を、そのままの形でペシャワール会に送りたいんです。」とのことでした。「与えてくださった生命を大切に、そのために今自分にできることをしよう」というスピリチュアルな想いを聴き取りました。
このように、自然、そしてさまざまな出会いを通して、“与えていただいた生命”への感謝の想いを伝えていただき、気づき・学びをいただき、私自身も生かされるのです。“生命の不思議さ”をも感じるのです。親を大事にする、ということも“いただいた生命”への感謝の表れでしょうし、“神による創造”を想えば、環境問題も単に人類が後何年生き残れるか、を心配する、ということではなくなるのではないでしょうか。
自他への“いただいた生命”を大切に想うなら、すべての生命との共存を想い、戦争も無くなるでしょうし、人種差別、他人への悪口もなくなるでしょう。日々の平凡な暮らしにも新鮮なものが見えてくるのではないでしょうか。