それでも人生に『のさり』と言う

それでも人生に『のさり』と言う

北九州ブロック 臨床パストラル・カウンセラー 加藤 理人


~熊本の方言:「のさり」について~

北九州ブロックスピリチュアルケア研究会(イエズスの聖心病院にて)

のさり1.はじめに
ゲスト訪問でスピリチュアルなキーワードに気付くことはスピリチュアルケアにおいて重要です。「のさり」は熊本の方言です。この「のさり」には様々な意味があり、熊本のスピリチュアルなキーワードだと思いました。

2.熊本の方言“のさり”の意味
1)意味 「分け前がある」、「ありつく」、「思いがけず何かをもらう」、 「幸運に恵まれる」、「恵み」など。
2)熊本県民の特徴:肥沃で生産力の高い風土に恵まれ、新しいものを取り入れる必要がなかったため、伝統的・保守的な志向が強く残した土地柄

3.生活における“のさり”
1)ライフステージ毎の使われ方
ライフステージ 「のさり」使用の変化
学童期  ・ごはんにのさった
・思いがけずプレゼントをもらって、「のさった」
青年期 ・彼氏にのさった
・先生にのさった
・仕事にのさった
成人前期 ・夫にのさった
・よか嫁さんにのさった
・子どもにのさった
成人中期 ・嫁・姑の関係など苦しい時に「これは私ののさりだけん」
成人後期 ・家族の不幸・自分自身の不幸を「私ののさり」
2)思い通りにならない現実、変えられない現実を受容する“のさり”
・例えば障がい児が生まれた家族で「のさり」が表出されるまでには、家族一人ひとりの様々な葛藤がある。
・「我が家ののさり(我が家に授かった)」と最初に表現するのは、母親からではなく、多くは夫や祖父母。
・夫や祖父母が「のさり」と表出する過程には、障がい児の成長や地域の人々の障がいに対するものの見方が影響している。
・重要他者である夫や祖父母が「のさり(授かり)」と表現することで、障がい児を産んだことに責任を感じていた母親が、自分をゆるし癒されると受け止めていた。

4.“のさり”による態度価値への転換
現実を受容すること、現実と共に生きること、において、“のさり“はV.E.フランクルが述べる態度価値(人生の中で起きてくる現実問題に対し、自分が どのような態度や行動をとるのか)への転換において、大きな役割を果たしていると考えられる。 “のさり”を使用する文化圏である熊本県民において、“の さり”という方言はスピリチュアルキーワードとなっている。

まとめ
臨床パストラル教育研究センターは、スピリチュアルケアの提供を保障する日本の社会の実現を目指しています。それは、「臨床の場」、「教育の場」、「研究 の場」においてスピリチュアルケアを提供することです。今回は、「臨床の場」でお聴きした「のさり」という方言を「研究の場」で深めることができました。 熊本には、「のさり」という言葉と共に現実を生きているゲストがいます。他の地域にも独特なスピリチュアルなキーワードがあると思います。誌上で掲載して いただくと大きな学びになります。ぜひ、教えてください。


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