臨床パストラル・カウンセラーとしての歩み

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臨床パストラル・カウンセラーとしての歩み

臨床パストラル・カウンセラー 吉良晴子


 私は、2008年6月に臨床パストラル・カウンセラーの資格認定を受け、今年6月に資格認定が更新された。スピリチュアルケアのパイオニアとしての自覚を持ちつつ歩んでいるが、これまでの活動の一部を報告することで、有意義であるも平坦ではない道を分かち合えたらと思う。
 資格認定前の2008年3月より、福岡県K市内にあるN病院にて、入院中のがん患者(以下「患者」)に対する訪問実習を、週1回(半日)させてもらっている(2011年は研究専念のため中断)。患者の主治医である内科医のH医師には、臨床パストラル・カウンセラーの資格と役割を理解していただき、患者へのスピリチュアルケアの重要性を共通理解とし、信頼を得、実習を継続させていただいている。
 H医師がスピリチュアルケアの重要性を理解している例として、末期で疼痛緩和目的の薬投与のために意識が朦朧としている30代女性A氏のそばへも行くことを促されたことがある。ただ手を握るだけ、そばにいるだけのケアを初めてさせてもらった。A氏とは状態が良い時に数回訪問しており、特定の宗教を信仰していない方であったが、入院前にキリスト教の聖書に出合い、イエス・キリストを尊敬し、天国の存在を信じていた。訪問初期の段階でA氏から、「吉良さんはキリストを信じている?」と訊ねられ、カトリック信者である私は、「信じている」と正直に答え、それから天国の話をする機会が何度かあった。そんな関係の中でのスピリチュアルケアであった。必然的にそばで見守っていたA氏の夫のスピリチュアルケアもすることとなり、これも初めての経験となった。しかし、看護師にはスピリチュアルケアがまだ理解されていないことを痛感させられた時でもあった。それまでここで2年間実習していたので、看護師にも私が病棟に入る時は患者の心理的ケアをしているとの認識がされていて、病室で患者と話していると「また後できます」と言って看護師の方が遠慮する機会の方が多い時期であった。しかしこの時は、薬投与での疼痛緩和しかすることができないと思っている看護師から、「何をするためにここにいるんですか」との言葉と共に、不思議そうな表情をされ、「H医師からそばにいるように言われています」と伝えて、ようやくそばにいることを認めてもらえた。また、H医師は、余命2週間と診断された60代女性B氏に対して退院前に最期の訪問することをが促してくれた。死の予感を身体的状態から悟っていたB氏は、天国で再会することを約束できた初めての患者となった。今までに、N病院に入院していた患者で、亡くなった方の名前を出し、「○○さんも待っているし、△△さんも待っている。吉良さんの席も取っとくね」ととてもユーモアたっぷりの会話であった。この方も特定の宗教を信じていないが、私と出会った頃にはこの世でない世界「天国」があることを信じていた。よって、A氏もB氏も死んでも天国に行けると信じていたので、死を怖がっていなかった。特定の宗教を信じていなくても、この世ではない死後の世界としての「天国」を信じる人がいることを体験した良い機会であった。
 H医師の理解がありながらのスピリチュアルケア実習であるが、N病院や患者に対しては、あくまで心理学科の学生または心理学研究科の大学院生としての立場で、心理的調査研究を兼ねて実習させてもらっているのが現状である。心理学の世界に入ったのは、臨床パストラル・カウンセラーになるための教育を受けている時期にある気付きがあったからである。スピリチュアルケアを啓蒙するためには、心理学を習得し、スピリチュアリティとの同異を明確にできる知識・技術が必要で、私にはまだそれがないと思ったからである。そのため、2006年4月にK大学の心理学科に編入し、2009年3月に卒業。臨床心理士を習得するために同年4月にK大大学院心理学研究科前期博士課程に入学し、2011年3月に「臨床心理学」修士を修了。さらに研究に専念するために2012年4月から同研究科後期博士課程に入学し今に至っている。
 N病院でのスピリチュアルケア実習の難しさは、私に何かを話さなければ、私と何かをしなければと患者が勘違いしている点である。その理由として、心理的調査研究を兼ねているため、面談の初期の段階で質問紙調査をすることがほとんどであり、患者の心理的・スピリチュアル的苦痛を緩和するために、回想法やアートセラピーやマインドフルネス等の手段を用いて関わるため、その調査後もその関わりのイメージを払拭するのにかなりのエネルギーが必要となる。


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