「Uさんの場合」

「Uさんの場合」

U50歳の男性で家族は奥様と21歳、16歳、14歳の三人の子供。大腸癌で大腿骨と肺に 転移あり、本人はこれらの状態を告知されていて、我々のホスピスに入られた。入院時の希望は「大腿骨の痛みを取って欲しいだけ」と言われる。ある程度痛み の緩和が出来てくると車椅子などで移動を一人で行うようになりましたが、動いた時など激痛が出現する事もありました。

それでも日中は前向きに「痛いからと言って動かさなかったら駄目。自分で動きたい」と 動く努力をする。しかし夕方になると、Uさんは「なんとも言えない気持ちになる。自分ではどうにもできん」と言われ、イライラしたり、痛みを訴えられま した。社会面では、Uさんは病気になったことで、自分をもっとも支えていた仕事という社会的役割を喪失したのです。

仕事への思いを残しており、職場での自分のことや、部下を如何に育ててきたかを、生き生きとした表情でよく話されました。精神面では、痛みに対する恐怖は強く、頓服で服用するモルヒネをお守りとして持ってもらうことは安心感を与えました。

ケアを行っていく中で、Uさんとの間には信頼関係も生まれ、今までの生き方や、どのように過程を築いてきたかなど、人生の振り返りをなさるようになり、自分自身を深く見つめるようになりました。

Uさんは死を怖くないと言われていましたが、夕方になると襲ってくる「なんともいえない 気持ち」と戦って自分自身に言い聞かせ、セルフケアしておられたのだと思います。Uさんは、死をどう考えるか、死後の世界があるかなど自然に話されること もあり、私の意見を求められた時は「私はこう思っています」と死生観を伝えていきました。

Uさんは死に対して「生があれば死がある。人は死に逝くのではなく、来た時が死ぬ時」と 話されました。このような会話をされる一方、体の変化や社会面での喪失感から、不安、苛立ち、怒り、恐怖を言葉として私たちにぶつけ、「もう死んだ方が いい」「こうなったらカスみたいなものだ」「猫でも自分の体は動かせるのに」「情けない、死んだ方がいい、殺してくれ」といったような言葉を繰り返し出さ れました。

私はUさんの話を聞かせて頂くことで多くのことを教えていただいている事を伝えました。 ある日、子供さんたち2人がうれしそうに走って病室に向かっていく姿を見て、父親が病室にいて待っていてくれるという、喜びがあるのだと感じた事をUさんに伝えました。

Uさんはとても驚いて「何もしてやれんのに、会うだけなのに、親に会うだけがそんなにうれしいのかな・・・」と言われました。このようなことから、Uさんの霊的な痛みが家族のかかわりの中で癒されるのではないかと考えました。

そこで、長男のかたに子供さんたち皆がお父さんへの思いを手紙に託してプレゼントしてみてはと提案しました。

そしてこれがきっかけで、家族と過ごす時を持ちたいと外泊されました。外泊中は自宅へナースが訪問して、痛みなどのケアをしていきました。希望日まで頑張りで外泊されました。

外泊から帰られた日、「子供たちとも沢山話せた。一緒に過ごせ、自分の中で区切りをつけることが出来た。ありがとう」という言葉を残し、5日後天国へ旅立たれました。

※(あるホスピス看護婦の話。心と魂の叫びに応えて、1998年度現場からの報告)


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